名古屋の相席屋とは
1件目を出たワイらは相席屋の情報を調べ出した。すでに行くことは決まっていたかのように足を運ばせていた。
「男性が8名で女性が54名だって!」
麻生が興奮して最新情報を伝えてきた。東京でも3人で行ったことはあったが、ここまで男性が少ないのは初めてだった。
チャンスやなーと小島は相変わらず目をキラキラさせている。この日のこいつは気合の入り方がオリンピック選手くらいのものだった。
ワイもすかさず
「今日は女性2名でお願いするっしょ?」
男3人で行くと必ずと言っていいほど、女性3人があてがわれる。しかし、ワイらはいつもそれが上手くいかない原因だと思っていた。
というのも、女性3人の場合、必ずその中の1人に学級委員長みたいな子がいて、一緒に飲もうと声をかけても、「私ら明日朝早いから」とか、「終電が」など決まり文句を言って来て、他の女性2名も巻き込んで帰ってしまうことが多かった。
「店側が絶対女性側3人と相席でお願いしますって言ってくるだろうけど、今日はめっちゃ粘って必ず2名と相席してもらうようにしよう」
小島は曇りのないまっすぐな目でそう言い切った。小島は名古屋に来て完全にトランス状態となっていた。
作戦会議をしていると、お店の前についた。そこにはキャッチのお姉さんがいて、「相席屋どうですかー?」と声をかけられた。小島はキラキラした目でお姉さんに答えた。
「女性2名でお願いします!」
はえーよ!!!!お姉さん意味分かんねえよ!
キャッチのお姉さんは少しびっくりしていたようだが、こいつ(麻生)の調子が少し悪くて、、と訳のわからん理屈で強引に押し切り、了承してもらった。
待ち時間もなく、席へと案内される。東京の相席屋と違い、どこか高級感を感じるような雰囲気だった。
「こちらの方々と相席になります」
店員さんに案内され、女性の間にワイらが座る形で相席が始まった。
見た目はとても若い2人で、金髪で髪を縛った女の子と黒髪で目元が化粧で少しキラキラしている女の子だった。
今夜のワイらは東京から旅行できていることを全面に押し出し、今夜一緒に飲んでほしいというスタンスで臨む、というのが3人の作戦だった。
話し始めると女性2名とも20歳で美容師だったが、ブラックすぎて2人とも会社を辞めたばかりとのことだった。
このお店よく来るの?とワイが問いかけると、2回目くらいかなー、まあ女性は無料だしねーと答えた。
それ言わない方がいいよ?みんなに"飯食い"って言われるよ?
とは、心の中で唱えるだけで、軽く相槌を打ちながら小島と麻生の方をチラ見する。2人の前のテーブルを見るとおしぼりが縦に置かれていた
これは"チェンジ"の合図だった。
2組目はまた次のお話
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